人事とか野球とか。

現役の人事部員のブログです。人事のこと、野球のことを中心にまとめています。

名球会と殿堂入り

定量評価と定性評価

 定量評価と定性評価のバランスは難しい。

 

 ガチガチに数字で縛る定量評価だと短期的な成果に終始するリスクがあるし、一方で定性評価では曖昧さや不公平感が残る。人事の世界でもここ数年で評価の在り方が多様化している。コンピテンシー(行動特性)評価、複雑な業績評価、部下や同僚からの360°評価など・・・。人事業界にもAIやデジタルの波が押し寄せているが、定量と定性の二本柱での評価を模索する時期が続きそうだ。

 

 アスリートも成績で評価される。特にプロ野球は成績を示す様々な数字で溢れている。これほど沢山の数字を扱うスポーツも珍しい。打率、本塁打数、OPS防御率UZR・・・枚挙に暇がない。沢山の数字を扱うのでイチロー田中将大のような名プレーヤーの偉業が分かりやすく伝わるのだろう。豊富な数字は野球の魅力だ。

 

 2000年代後半からはセイバーメトリクスの飛躍的な進歩により走攻守あらゆる側面に数字が登場した。これはこれで進化と呼べるのだろうけど、数字ばかりでもつまらない。力と力がぶつかり合うスポーツの醍醐味を純粋に味わいたいし、キャプテンシーや勝負強さのような目に見えない魅力もあってのスポーツだと思う。

 

名球会野球殿堂

プロ野球で優れた成績を残したプレイヤーは大きく二つの団体への入会が名誉とされる。日本プロ野球名球会(以下、名球会)と野球殿堂だ。

 

 まずは名球会名球会の入会資格は極めてシンプルである。

 

NPBの選手または元選手

・昭和以降の生まれ

・日米通算(NPBMLBの合算)で以下のいずれかを達成、ただし、NPBでの記録をスタート地点とする。 

 ①通算200勝利以上

 ②通算250セーブ以上

 ③通算2000安打以上

 

 会員数は20204月現在で投手16人、野手47人の計63人。野手が投手の人数を大きく上回っている。投手分業制が進み通算200勝が過去に比べて困難になった。通算セーブ数もハードルが高く、単純計算で30セーブを9年以上続ける必要がある。チームに一つの椅子しかないクローザーに10年近く君臨するのは至難の業だ。いずれ投手の資格は見直されるだろう。

 

 一方の殿堂入りは20204月現在で207人。表彰は大きく競技者表彰と特別表彰に分かれる。競技者表彰はプレーヤー部門とエキスパート部門に分かれ、プレーヤー部門は元プロ野球選手、エキスパート部門は監督やコーチ、審判が対象となる。特別表彰はアマチュア野球の選手、監督、コーチ、審判が対象となり、甲子園や都市対抗野球などプロ以外で活躍した者に向けた表彰だ。

 

殿堂入りは名球会と異なり定量的な入会基準が存在しない。それでいいと思う。チームの黄金期を支えた名コーチ、都市対抗野球で長年活躍したエース、長年球界に貢献した審判など、2000安打や200勝といったモノサシで評価できなくとも、優れた人材を表彰するには議論を重ねて定性的に評価するのも必要だ。

 

■助っ人選手と日本人選手

 野球に国籍は関係ない。これまでも数多くの助っ人外国人がNPBで活躍し、その発展に貢献してきた(ちなみに筆者はこの「助っ人」という表現が気に入っている)。ところが、NPBではこれまで助っ人は2人しかプレーヤー部門で殿堂入りしていない。300勝投手のヴィクトル・スタルヒンと日系二世の与那嶺要だ。スタルヒンは史上初の300勝投手、与那嶺要3度の首位打者を獲得した大打者である。2人の殿堂入りには全く異論はない。

 

 しかし、である。1994年の与那嶺要以降、外国人選手の殿堂入りが「ゼロ」なのだ。2年連続三冠王ランディ・バース、同じく三冠王ブーマー・ウェルズ、通算464本塁打4度の本塁打王に輝いたタフィ・ローズはじめ数々の名助っ人が候補に挙がるも、殿堂入りを果たしていない。他に殿堂入りした日本人選手と比較しても、成績的には殿堂入りに相応しい成績を残したにも関わらず。

 

 殿堂入りは定性評価である以上、投票者に様々な意見があってもよい、しかし、投票の根拠は明確にするべきだ。アメリカ野球殿堂は記名式で投票する。投票者は全米野球記者協会(BBWAA)に10年以上在籍した記者だ。投票後に記者間で投票した選手とその理由などを意見交換するらしく、仮に投票理由が乏しい場合は記者仲間から有力な情報を流してもらえないそうだ。それだけ野球殿堂に重みがある。全てをアメリカの模倣とする必要はないが、球界における最高の栄誉であるNPB殿堂入りの権威を更に高める上では、記名式とするなど、透明性のある投票は必要だろう。

 

 令和に入り、NPBの殿堂入りも変化が必要な時期なのかもしれない。